16-2 上杉景勝(前編) 挿絵3 お気に入り画像登録
16-2 上杉景勝(前編) 挿絵3

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投稿日時
2025-07-28 16:07:36

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てんぽたんぽ

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景勝は、ふっと口元を緩めた。



景勝「頼朝様……武辺者は、えてして女子には分が悪い。我もまた、その例に漏れぬ。坂田殿、どうか気を病まれますな」



その言葉には、無骨ながら、どこか優しげな響きがあった。続けて、景勝は表情を引き締め、頼朝に向き直った。



景勝「実のところ、弓をこのまま手放すことに、些かのためらいがございました。事と次第では、力ずくでも越後に連れ戻す所存でおったのです」



頼朝の側近たちが、一瞬ざわめいたが、景勝は静かに言葉を紡いだ。



景勝「ですが……この目で拝見いたしました坂田殿は、まことに剛毅なる男。さらに、頼朝様ご自身も、期待に違たがわぬ器量の御方でございました」



景勝の語調には、すでに確固たる信頼が滲んでいた。



景勝「我が上杉家は、先代・謙信公の代より、『義』のためにのみ刀を抜く家風を貫いております。利に走らず、栄耀を求めず、ただ正義と道理のために戦う――それが我らの誇りでございます。



ゆえに、頼朝様が率いられるこの軍団が、我らと並び立ち、『義』を掲げて共に歩むに値するか。その真を見極めるべく、私は弓と共に、貴国へと参じたのです」



そして、ゆっくりと頷き、毅然と宣言した。



景勝「今、確信を得ました。この度の縁組、上杉家は誇りをもってお受けいたします。頼朝様、何卒、今後とも、堅き誼をお願い申し上げます」



そう語ると、景勝は弓へと視線を移し、やがて金時に目を向ける。



景勝「……ただ一つ、案じておりますのは、弓の気性にございます。父の私が、武門の娘としてあまりにも厳しく育て過ぎましたゆえ、女性らしき所作とは無縁……。坂田殿、どうか寛大なお心で、お受け止めいただければありがたく思う」



金時は、背筋を正し、真っ直ぐに景勝を見据えた。



金時「は、ははっ……お心遣い、まことに痛み入ります! しかしながら、景勝様、どうかご安心を。拙者、坂田金時、命に代えても、弓殿をお守りいたしまする!」



その声は震えていたが、言葉には誠実な覚悟が込められていた。
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